うちまち

台風が…。

台風に…。

台風で…。

周りの会話の中で、台風の単語が多く聞こえるようになった。

ネットで台風情報を見ると、強大な台風が沖縄を直撃するコースが予測されている。

明日は直撃か。

仕事がら台風でも出勤しないといけないが、命の危険を冒してまで出勤したくはない。


　＊　　＊　　＊


お昼休みに外に出ると、食堂にそばにある木々から鳥の鳴き声が聞こえた。

ピー、ピー、ピー！

ピーヒョロロー、ピー！

ピーヒョロロ、ピー、ピー！！

これまで聞いたことがないほど、鳥達の声が騒がしい。

多くの鳥達が木へ避難しているようだ。


「台風だピー。今回はヤバいピー。どこに避難するピーよ」

「早く出ないと手遅れになるピー。」

「相談している暇はないピーよ。早く行くピーよ」

こんな会話をしているのだろうか。

鳥がこれほど騒ぐのは、今回の台風の危険性を示しているのかもしれない。


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休憩が終わり、職場に戻ると上司が皆に声をかけていた。

「台風が近づいてくると、身体がうずうずしてくるな。カラオケに行かないか？」

確かに台風が近づくてと、気持ちが高揚し、身体がうずいてくる。

「いきましょう！！」

私は誘われた瞬間に返事をしたが、他に続く者はいなかった。


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上司と二人きりのカラオケ。

カップルのように二人で横並びに座り、自由に歌った。

若干の世代間ギャップを感じながらも、気が付けば２時間が経過していた。

「最後の締めの曲？何行く？決めてくれ」

最後の曲…。

その時、昼間に聞いた鳥たちの声が浮かんだ。

ピー…

ピー、ピー…

ピーヒュルル、ピー…

これだ！！

「踊るポンポコリンでいきましょう！！」

最後の曲は上司と２人で立ち上がり、踊りながら歌った。


さくらももこさんは、鳥の鳴き声、胸の高鳴りから、この曲を作詞したのだろうか？

ご冥福をお祈りします。